乳海攪拌 天地創造
今回はヒンドゥの天地創造神話。乳海攪拌のおはなしをしましょう。
バンコク、スワンナプーム空港には大きな乳海攪拌の像があります。なぜ仏教国タイのハブ空港のど真ん中にヒンドゥの天地創造神話の像があるのかはナゾですが、たぶん、この空港を利用したことのある人はこの大きな像が印象に残っているとおもいます。
昔、神々は不老不死の存在ではありませんでした。そこで神々は、不老不死の秘薬、アムリタを作ることにしました。
アムリタを得るにはどうしたらいいか・・・・
相談していると、ヴィシュヌさまが、神々とアスラたちが共同で海を攪拌することで、アムリタが得られると告げました。
しかし、これは神さまだけでできることではありません。アスラたちの協力が必要です。
(アスラは悪魔と訳されることが多いようですが、私の個人的な印象では悪魔ほど邪悪な印象はありません。確かに、人間にとって脅威となる存在なのですが、二元論的な善悪ではないと考えています)
神々とアスラたちは相談して、マンダラ山を軸とし、大蛇ヴァースキを巻きつけて両側から引っ張りあい、海を攪拌することにしました。
下に見えている亀はヴィシュヌさまの化身。地面が沈まないように軸をささえています。
しかしヴァースキにしてみればいい迷惑です
自分のからだを世界の中心に巻きつけられて、神とアスラ総がかりで引っ張られたのではたまったものではありません
当然ヴァースキは
げろげろげろ~
毒を世界中に吐き散らしたので世界が滅びかけるハメに・・・
そこへ現れたのは男の中のオトコ、シヴァさま。ヴァースキが吐いたゲロ毒をすべて飲み干して世界を救いました。
そのときの毒でシヴァさまののどは今でも黒くやけているそうです。
あまりに激しく攪拌したので、その摩擦でマンダラ山が燃え、動物が丸コゲになって海に転がり込み、さらに海の生物はすべてすりつぶされて海は白濁して乳のようになりました。
それでこの海を乳海とよびます。
しかし、神さまがた・・・・自分たちが不老不死になるためにどこまで無茶を・・・・
さて、乳海の攪拌がすすむと、そこに太陽と月が。続いてラクシュミー女神さまが。・・・・中略(多すぎて覚えてません)・・・・とにかく、美女やら宝物やら神様やらが次々に乳海の中から現れ、最後に医学の祖ダスヴァンタリ神がアムリタの入った壺を持って現れました。
当然、神々とアスラの間でアムリタ争奪戦が勃発。(手伝ってもらったんだから、アスラたちにも分けてあげようという気は神様たちにはなかった模様・・・)
アスラがアムリタを奪ったかに見えましたが、ヴィシュヌさまが絶世の美女に化けてアスラを骨抜きに。神さま、アムリタの奪還に成功。
・・・いろいろ腑に落ちない点はありますが、一応、えらくて正義の味方の神さま達がアムリタを手に入れたので、めでたしめでたしということらしい
が。。。神々がアムリタを飲んでいるときにアスラのひとりのラーフが神に化けてアムリタを飲んでしまいました。
すぐに気づいた太陽と月がラーフの首を刎ねたのですが、すでにアムリタを飲んでしまっていたラーフは首と胴に分かれても生きていました。
それ以来、ラーフは太陽と月を恨み、会うたびに飲み込むようになりましたが、胴体がないので、太陽と月はすぐに出てくることができます。
これが日食と月食となったということです。
・・・・・えと・・・・この話、
どこをとっても蛇さんとかアスラさんが被害者のような気がする
のは私だけでしょうか
ちなみにインド占星術では首をラーフ、胴体をケートゥとよび(西洋占星術ではドラゴンヘッド、ドラゴンテイル)凶星とされていますが、実際には惑星ではなく、月と太陽の軌道の交点となります。
インドの占星術師たちは太陽と月の軌道を正確に知り、計算によってラーフとケートゥの位置を導き出していたわけですね。
そして、話の顛末はともかくアムリタを得るのに神だけでなく悪魔とさえ訳されるアスラの力が必要だったという点も、善悪二元論に収まらないヒンドゥの深さを感じさせます。
じっくり読んでみると、いろんな寓意が含まれているようで、私の好きな話のひとつでもあります。